朝焼けに君が照らされている。眩しそうに細められたその瞳には、昨夜まで僕らが見ていた夢の続きは、もうひとかけらも殘っていない。「……あの、どちら様ですか？」小首をかしげ、不思議そうに僕を見上げる君。その白紙に戻った眼差しに、胸の奧が鋭く疼く。けれど、光に透ける橫顔があまりに綺麗だったから、僕は痛みを飲み込んで笑ってみせる。かつて君は、泣き出しそうな僕の手を握り、こう言った。『私を愛してくれるなら。忘

「君の一番になりたい」ずっと、彼の親友という特等席で満足してた。だけど、隣で笑うだけじゃもう足りない。「……私、君の『一番』になりたいの」震える聲で告げると、彼は驚いたように目を見開いた後、優(yōu)しく私を抱きしめた。「勿論。俺にとっては、ずっと前から君が一番だよ」ようやく重なった、二人の物語。二人は優(yōu)しすぎる笑みを浮かべ、歩き出した。

あのことを忘れるなんて、できるはずがない。朗らかに澄んだあなたの笑い聲も、繋いだ手の溫度も、私を呼ぶ優(yōu)しい響きも。「時間は薬になる」と誰かが言った。けれど、月日が流れるほどに記憶は鮮明さを増し、會えない現(xiàn)実だけが鋭く胸を刺す。あなたがいない世界に慣れていく自分が、一番の裏切り者のように思えてならない。忘れたくない。でも、この痛みから逃げたい。「いやだ、そんなのって、」

夕暮れの図書室、窓際の席で本を捲る君の橫顔があまりに綺麗だった。オレンジ色の光が長い睫毛に透け、靜寂の中に紙をめくる音だけが響く。「……あの、どうかしましたか？」不意に視線が交わり、僕は慌てて意識を引き戻した。心臓の鼓動が耳元までうるさく跳ねる。「…ん？ああ、見惚れちゃってたよ」正直すぎる言葉に、今度は君が赤くなる。僕たちの間に、戀が落ちた音がした。

いつだったか同じ景色を見たことがある。雪の新宿駅、彼が差し出したのは三年前と同じ溫かい缶コーヒーだった。「あの時も雪でしたね」覚えていてくれていたことに驚く私に、彼は少し照れたように笑う。ずっと、あの日から私を探してくれていたのだ。積もり始めた白が、止まっていた二人の時間を新しく塗り替えていく。